# 設計とは何か?
# はじめに
CSS は誰でも簡単に、自由に書くことができます。Java 言語のような型制約もありません。だからといって好き勝手に書いてしまうと、後にさまざまな混乱や問題に悩まされるでしょう。
不十分な設計による失敗:
WARNING
- 後からコードを見返したときに読み解くことができない
- 第三者への情報共有・引き継ぎが困難
- パーツが再利用できず、修正のたびにコードを追加
- スタイルの上書きが頻繁に行われている、!importantを多用している
- 修正した部分が意図しない箇所にも影響してしまう
- 何のために使っているか分からないスタイルが存在する
etc...
逆に、思慮深く設計された CSS がもたらす恩恵は:
TIP
- 予測しやすい
- 予測した通りに動いてくれること
- 他者が読んでも理解しやすいこと
- 再利用しやすい
- 必要以上にコードを書かずに済む
- 保守しやすい
- コードの修正や追加が簡単に行えること
- 拡張しやすい
このガイドラインは、主に CSS や HTML を用いたフロントエンドコーディングにおける、設計と実装の方法を記載しています。
また、対象は Web アプリケーションの UI コーディングです。ただし一枚もののランディングページ(LP)やキャンペーンサイトについても、記載内容のほとんどを適用できるはずです。
# アプリケーションは変化する
業務システムや EC サイトなどの Web アプリケーションは、完成することがありません。いったんリリースされてからも、不具合の修正やユーザーからのフィードバックをもとに機能追加が行われ、ブラッシュアップされていきます。アプリケーションは、使われ続ける限り、変化を繰り返して成長します。
設計とは、将来の変更に備えることです。
設計の目的は、出来るだけ少ない工数や影響範囲で将来の変更を実現することです。
この「出来るだけ少ない工数や影響範囲で将来の変更を実現」できること、またその度合いを、保守性(メンテナンス性)という言葉で表現することもあります。
# コンポーネント指向
# コンポーネント指向とは
上記の目的を達成するために、このガイドでは、コンポーネント指向という考え方を採用します。
コンポーネント指向とは、Web アプリケーションの UI を、コンポーネントの集合体として捉える考え方です。ページを組むのではなく、コンポーネントを組む、組んだコンポーネントを集めた結果としてページが出来上がるイメージです。
コンポーネントとは、Web アプリケーションの UI を構成する部品です。具体的には、見出しやボタン、テキストボックス、テーブル、リンクなどです。
具体的な手順は後述しますが、ざっくりいうと...
- デザインファイルの全体を見渡す。
- 視覚的な抽象化を行う。つまり、デザインファイル全体の中で特定の同一性をもつ部分を見つけ、コンポーネントとして切り出して名前をつける。
- コンポーネントの文書構造を HTML によって記述する。また、視覚表現を CSS によって記述する。
# なぜコンポーネント指向?
ページ数の多い本格的な Web アプリケーションでも、何種類かのコンポーネントの集合としてページが成り立っています。
機能の追加や修正が発生するとページの項目は変わっていきますが、コンポーネント自体はそこまで頻繁に変わりません。たとえば機能追加のたびに新しいデザインのボタンが増えたら、統一感がなくなって、使いづらいアプリになってしまいますよね。
また仮にコンポーネントに変更が加わるなら、その変更には一貫性があるべきです。たとえば入力欄のデザインを変更する必要があるなら、すべてのページのすべての入力欄が同様に変更されるべきです。
そのため、コンポーネントにフォーカスすることが重要になってきます。変更のたびにいちいちページごとに新しく考え直すよりも、効率的なのです。
コンポーネントの設計をしっかり行うことで、どんな規模のアプリケーションでも効率よく開発を行うことができます。
# コンポーネント指向の実例
以下のような CSS フレームワークは、コンポーネント指向のもっとも分かりやすい実践例と言えるでしょう。
CSS フレームワークとは、作り置きのコンポーネントのスタイル定義セットです。特定のサイトでの利用を想定しておらず、汎用的に作られています。そのため、デザインは簡素ですが、文脈に依存しない、独立性の高い設計がなされています。
このガイドにおける CSS 設計は、上記のフレームワークを大いに模倣しています。少々乱暴ですが、設計の目標は「特定のアプリ用の CSS フレームワークを作ること」とも言えるでしょう。
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